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2. シンクロ・ルーティン中での背泳ぎ

ルーティン中、背泳ぎは各所に見られる。基本的な背泳ぎを3〜4回連続して推進力を生み出し、上向き水平姿勢に浮力をつけさせて、より高い位置へ楽々と脚や身体を持ち上げる動作は、デュエット・チームではしばしば使われている。このような動作を多人数で行うと、非常に大きなパワーが生み出される。
一般的には、リカバリー動作の時に腕や手先に表情を持たせて、音楽のリズムやメロディーに合わせた動き、即ち背泳ぎの応用泳法が多く使われている。リカバリー時の表現動作を効果的に見せるために、動作にアクセントを加えたりタイミングに変化を持たせる工夫がされている。このような変化は、キックの変化によるものだと言える。
それでは、背泳ぎのキックがどのように重要な働きをしているのか、考えてみたい。
(1)推進カ
ルーティン中の背泳ぎで生みだされる推進力は、ほんの少しの例外を除けばほとんどがキックに依存している。
シンクロは2回採点がルールである。審判員は1回目の採点、テクニカル・メリット(技術点)の中で、泳ぎとその部分の正確さと難しさを評価する。これらは、フィギュアとその部分の正確さと難しさと同等のウェイトを占め、それは、ソロ・デュエット・チームのいずれにおいても同じである。したがってルーティン中の泳ぎも正確で継続的・流動感のある推進技術が求められ、評価されている。
これはバックキックのみをどれだけトレーニングしても上達するものではなく、基本になるバックキックをあらゆる角度で、あらゆる方向に使いこなせるようにならなければならない。言い換えれば、バックキックを基軸にしたコンビネーションキックの多様性を、いかに高められるかである。必要に応じてコンビネーションキックの組み合わせを自在に変えることにより、スピード変化・体

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写真1 アトランタオリンピックチームフリールーティンより

位の変化・表現動作の高さもスムーズに変化させることができるようになる。
トップレベルの演技では、チームの隊型が審判員や観客が手脚の表現動作に注意を引かれている間に変化してしまっているということがしばしば見られる。これは前の動作と次の動作とのつなぎに、無理な印象を与えないようなコンビネーションキックが工夫されているからである(写真1)。
アトランタオリンピックで日本チームがフリールーティンで見せたリフトの成功は、図1,2でわかるように横2列から水中に潜り、混雑した中をできるだけ素早く自分の持ち場に到達して土台

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図1

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図2

 

 

 

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